公園でボール遊びや花火をしたり、コンビニの駐車場でうんこ座りしながらアイス片手に駄弁ったりするのにも何かとはばかられる現代において、劇場は誰に咎められることもなく法律の範囲内であれば自由な表現ができ、そこに人を呼んで観てもらうことが許された特殊な場所です。特に小劇場みたいに未知な表現をやっている団体を、80人とか、ときには30人くらいの少数の物好きがギュウギュウに座って観ていると、なんだかお互い親に内緒で悪いことしているような謎の共犯意識みたいなものがやる側とみる側の間に生まれたりなんかもして、上演される作品と集まる観客によって劇場という場所の特殊さは更に増していきます。
小劇場はその特殊さがときに世間から白い目を向けられてしまうこともありますが、それでも私たち小劇場演劇大好き人間にとって劇場が特別な場所であることは間違いありません。
特に王子小劇場は、劇場好きというマニアックな性癖に理性を失い劇場職員にまでなってしまったなんとも可哀想な人たちで運営されています。
私たちは王子小劇場職員は日夜、劇場利用団体に寄り添いながら劇場の可能性について模索し、将来有望な若手を血眼になって探し続ける日々を送っていました。
しかし、コロナウイルスを前にして私たちは劇場という場所の抱える大きなリスクに直面しました。緊急事態宣言が開けて以降、私たちに出来る限りの感染防止対策を行い、劇場利用団体と綿密に打ち合わせを行いながら慎重に公演の準備を進めています。しかし、新型コロナウイルスを取り巻く状況は未だ先が見えず、やむなく「上演中止・延期」という苦渋の決断に至る団体が後を絶ちません。
ぽっかりと空いてしまった劇場を前にただ呆然と立ち尽くしたままの日々が続きました。今、演劇をやる意味について、劇場が出来ることについて沢山悩み、議論しました。正直、まだ何が正解なのかは分かりません。ただ劇場が今できることを熟考した結果、未来のために行動しようと決意しました。
特に、おそらく今もっとも活動継続の瀬戸際に立たされているであろう若い層に向けて「劇場」という場所を利用して出来ることを始めてみます。
ここで歩みを止めてしまいそうになっている多くの演劇人に向けて、これから演劇という世界に入ってくるはずだった未来の演劇人に向けて、劇場を開くことこそが演劇の未来のために出来ることだと思いました。劇場が本格的に再開し、観客席を定員いっぱいまで埋められ、何にも制限をされない表現をできるようになった日に、「公演をする劇団」が、「舞台に立つ俳優」が、「作品を支えるスタッフ」が、「作品を受け取る観客」がちゃんと劇場に戻ってこれるように、微力ながら行動をしていきます。
花まる学習会王子小劇場は演劇の未来のために今できることからはじめてみます。劇場の、そして演劇の本格的な再開に向けたささやかな合図としてまずは細〜い狼煙を北区王子の地から上げてみることにしました。
明日が見えずに立ち止まってしまった演劇を愛する皆様、どうか目を凝らしてそのひょろ長い狼煙を見つけてください。
花まる学習会王子小劇場芸術監督 池亀三太
のろしシリーズ第一弾