2014年10月27日

カミグセ 「その揺れでふれる手」

カミグセ  http://ameblo.jp/kami-guse/

「その揺れでふれる手」
2014/10/23(木) ~ 2014/10/26(日) @王子スタジオ1 7st.

【作・演出】
つくにうらら(カミグセ)

【出演】
嵯峨ふみか(カミグセ)
有吉宣人(ミームの心臓)
中村佳奈
【日時】
10/23日(木) 19:30
10/24日(金) 14:00/19:30
10/25日(土) 14:00/19:30
10/26日(日) 13:00/17:00

【チケット】
前売 一般  ¥2200
   学生  ¥2000
   高校生 ¥1000(前売・当日共)
当日 一般  ¥2500
   学生  ¥2300

【こりっち】
http://stage.corich.jp/troupe_detail.php?troupe_id=7903

【感想などまとめ】
http://togetter.com/li/736417

【スタッフ】 
演出助手 中島悠子(多少、少女)
舞台監督 小川陽子(空間企画)
宣伝美術 嵯峨ふみか
スチール撮影 林亮太
制作補佐 佐々木千加
制作 柿木初美

2014年10月22日

カムヰヤッセン「未開の議場」

カムヰヤッセン http://kamuyyassen.daa.jp/

「未開の議場」

2014/10/22(水) ~ 2014/10/27(月)@王子小劇場 10st.

【脚本・演出】北川大輔

【配役 出演】
大崎龍介 JA萩島町職員       辻貴大
大崎舞子 銭湯 大黒湯       島野温枝
葉浦充  はうら行政書士事務所   小林樹
神田香  神田不動産        宍泥美
馬場倫彦 ツバメ食品萩島工場総務課 小島朋之
森雄太  NPO法人日留教育協会   小沢道成
向井章吾 ゲームセンター百発百中  橋本博人
升遠綾子 スナックすっぽり     工藤さや
紫門源一郎 紫門商事 社長     新名基浩
苗山みどり カフェ・プリエンティ  ししどともこ
湯田清彦  ララマート萩島店    杉原幸子
町屋要   スーパーマチヤ     安藤理樹
池畑由美子 萩島ケーブルテレビ   小角まや


【日時】
10月22日(水) 19:30
10月23日(木) 15:00/19:30
10月24日(金) 19:30
10月25日(土) 15:00/19:00
10月26日(日) 11:00/15:00
10月27日(月) 15:00/19:30

【チケット】
一般 前売・振込 2500円 / 当日精算 2700円 / 当日 3000円
学生 各500円引き
高校生以下 前売・当日共に 500円
【こりっち】
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=57098
【感想などまとめ】
http://togetter.com/li/734545

【スタッフ】
脚本・演出 北川大輔
舞台監督・照明 黒太剛亮(黒猿)
舞台美術 佐藤恵美
衣裳 山本香穂
スチール 原絵里子
宣伝美術 安藤理樹
演出助手 足立拓海  内山拓磨
制作 新居朋子(ゲンパビ)
制作補佐 萩原深雪
メイク指導 蒲谷容子
翻訳 李そじん 万里紗
休演 太田宏(青年団)
協力 アマヤドリ 虚構の劇団 天辺塔 東京タンバリン
PLAT-formance キムヨンナム にしすがも創造舎
助成 日本芸術文化振興会
主催・企画・製作 カムヰヤッセン

2014年10月16日

TheaterSpace☆ABRAXAS 「Jupiter【ジュピター】」

TheaterSpace☆ABRAXAS http://abraxas.jp/

「Jupiter【ジュピター】」

2014/10/16(木) ~ 10/19(日) @王子小劇場 5st

【作】
ABRAXAS脚本チーム

【演出】
岩崎高広&ABRAXAS

【出演】
キャバレー富太郎、本名 富田芳男:高野力哉
ランコ:玉置加耶
武田建設 武藤薫:高橋由利子
野中晴彦:中村政仁(劇団光希)
野中春子:羽杏

【日時】
10月16日(木)19:30
10月17日(金)14:00 / 19:30
10月18日(土)19:30
10月19日(日)15:00

【チケット】
前売り3500円
当日4000円
高校生無料

【こりっち】
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=57760

【スタッフ】
舞台監督:横山朋也
ダンス振り付け:VioleEva(紫ベビードール)
音楽:内海治夫
音響:伊藤一巳
照明:亀井影人
宣伝美術:黒田哲平(劇団海賊ハイジャック)
撮影:五味護

2014年10月14日

劇団アルデンテ「8.-hachi.- Tokyo」

劇団アルデンテ http://aldente.smile.tc/

「8.-hachi.- Tokyo」

2014/10/11(土) ~ 2014/10/13(月)@王子小劇場 5st.

【脚本・演出】近藤フミヒロ


【配役 出演】
アマネ  酒井亜美(フリー)
ハジメ  松岡良幸
リョウコ たなかえみこ
オキタ  伊藤久史
イルマ  大野郁実
ラヴ   寺尾大成(フリー)
ナンゴウ 池上龍哉
店長   近藤千恵
タチバナ 緑川美月
ドクター 近藤文拓
ジョリアン上田晶


加藤聡子
木崎ひま(フリー)
後藤高彰(劇団色えんぴつ)

永田健二

【日時】
10月11日(土) 19:00
10月12日(日) 11:00 / 15:00 / 19:00
10月13日(月) 13:00

【チケット】
一般 前売 2500円 / 当日 2800円
学生 前売 2000円 / 当日 2300円
高校生以下 前売・当日共に 1000円

【こりっち】
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=57230
【感想などまとめ】
http://t.co/XqJt1aMHpp


【スタッフ】
舞台監督 松岡良幸
照明 近藤フミヒロ、村瀬友里加
音響 宇佐美洋介、永田健二
衣装 たなかえみこ、大野郁美、酒井亜美
装置 松岡良幸、緑川美月、荒井大輔(劇団あとの祭り)、
   後藤高彰、丹波将之
小道具 片桐久志、近藤フミヒロ、ちなみ
舞台装飾 大野郁実、加藤聡子
殺陣指導 丹波将之、市川智也(TEAM垣んちょ)
楽曲制作 安川将隆
制作 近藤千恵、伊藤久史、たなかえみこ、
   緑川美月、加藤聡子
後援 岐阜県教育委員会、岐阜市教育委員会
   岐阜県芸術文化会議、岐阜市芸術文化協会

2014年10月10日

王子小劇場スカラシップ2014上半期レポート

2013年4月よりスタートした「王子小劇場スカラシップ」
スカラシップ対象者は、王子小劇場の全演目を、無料で観劇できます。

今年度の4名の対象者に、6月25日から7月21日に渡って開催された「佐藤佐吉演劇祭2014+」の参加作品について、レポートを提出していただきました。

これからの日本の舞台芸術を担う彼らが今、東京の演劇に対して感じていること、それぞれの専門分野を活かした視点は、とても興味深く読み応えがあります。

ぜひ読んでください!


臼杵遥志(立教大学 現代心理学部)

藏下右京(東京大学 教養学部 文科一類)

野口彩(國學院大学 法学部 法律学科)

山田カイル(東京学芸大学 教育学部 芸術スポーツ文化課程表現コミュニケーション専攻)




2014年10月9日

佐藤佐吉演劇祭2014+ 総評

演劇と街が息を合わせる時 ― 佐藤佐吉演劇祭2014+


 北区の王子で2年に1回の程度で開催される佐藤佐吉演劇祭は今年で第6回目を迎えた。東京の小劇場演劇の中から王子小劇場の職員が選び、自信を持って推薦する劇団の作品を集める演劇祭である。

 6月25日から7月21日までの期間に行われた佐藤佐吉演劇祭2014+は、みどころの多い演劇のショウケースになった。参加劇団の数は今回12組に及び、公演の趣向の幅が広かったことが最大の理由である。それに加えて、複数会場で行われ、一日に複数の公演を同時に行う初の試みでもあった。観客は終演後一つの会場を出て、別の公演を観終わったばかりの観客とすれ違ったり、知り合いでもないのに、観劇がきっかけになって親近感を感じたりするという、演劇のお祭りの時にしか体験できないようなことが観劇体験に加わった。

 それぞれが独特の演劇スタイルを王子で披露した劇団は互いに対してライバルでありながら、演劇の魅力を佐藤佐吉祭の観客に伝える、街を演劇で盛り上げる挑戦には味方だった。各団体の個性が演劇祭に自分ならではの色を添えた結果、濃い色彩の全体風景になったのだ。以下は手短ながら公演を一つずつ振り返って、取り上げたいと思う。

 ナカゴーの『ノット・アナザー・ティーンムービー』は、同名の映画と同じように、アメリカ青春映画の使い古された文句や場面を再構築し、このジャンルのパロディーとして上演する。誰でも見覚えのあるような場面ばかりが観客の目の前で展開していく中、このようなパロディーに親しんでいる目ききにしか味わえない、特権的とでも呼べるようなユーモアがここにあると気がつく。ナカゴーは活気溢れる団体で、演技の面では特別な柔軟性を見せる。今回の公演は北とぴあのお洒落なシャンデリア付きのカナリアホールという特質的な会場で行われたにも関わらず、この団体は自分特有の芝居を上手に最後までやり遂げた。どの会場でも自分の演劇ができる劇団は強い。ナカゴーのユーモアは一見で少し腑に落ちない側面もあろうが、お得意の演劇スタイルをどこまで持って行けるかを見ておく価値がある。

 同期間に北とぴあのスカイホールで公演中だった柿食う客の『へんてこレストラン』は、宮沢賢治の『注文の多い料理店』をベースにして作られた舞台である。「こどもと観る演劇プロジェクト」という企画に添った作品として、子どもにも大人にも見やすいような演劇を志している。しかし、子ども向けだからといって、変に分かり安すぎて、子どもっぽいという感じはしない。演出家の中屋敷法仁は幼い観客の目の鋭さを信じて、「子ども好み」らしい表現を敢えて優先としなかった。歌のような言葉のリズムが振り付けと調和し、その統一性自体が面白味を生じさせる。結果、「へんてこレストラン」は、観客の年齢を問わず、人の心を引きつけるような作品になっている。佐藤佐吉祭がきっかけになり、柿食う客の個性の強い演劇に始めて出合った観客は大きな獲得ができた喜びを覚えるであろう。

 演劇祭の第一週目には、劇団肋骨蜜柑同好会の『つぎとまります・初夏』も上演された。文学的な雰囲気の不条理劇として、ナカゴーと柿食う客の舞台とはまた違う面白さを帯びた作品だった。スランプに落ちた小説家がバスに乗ってこの世界のどこでもないような別次元の場所にたどり着き、そこで流し素麺機で遊ぶ幽霊かのような女性に出会い、彼女とのかみ合わない会話の中で小説家である自分の動機を再びみつける。このハードボイルド・ワンダーランドのような平行世界を連想させる設定には、爽やかな感じの不思議さがある。人間が求めている全ての答えが出ない世界も悪くない、というような、肩の力を抜けさせるメッセージが伝わる。観客は、会場のpit北⁄区域を出てからも、世界が流し素麺機の中の流し素麺機であるという謎に考え込んだまま、不思議な安らぎを与えてくれる芝居に感謝のような気持ちを覚えながら、微笑してしまう。『つぎとまります・初夏』はこの感じの演劇体験だった。

 王子小劇場で演劇祭の初日から上演された犬と串の『エロビアンナイト』は、人を警戒させるタイトルで責めるが、実は極めて純粋なラブコメディーだった。禁止された愛の切なさと、その切なさを乗り越えるための気さくなユーモアを織り交ぜた形が最大の魅力だった。特にエネルギー溢れる演技で深く印象に残るこの舞台は、作り手の想像力を最高度に機能するだけではなく、観客の想像力をもフル回転させる。速度の速い場面転換、セリフ上の速いやり取り、そして何よりも思いもつかないようなサプライズ的な要素があり、今までに犬と串を知らなかった観客は呼吸をするのも忘れてしまいそうな状態になったのではないかと思う。演劇的空間としての王子小劇場の可能性を最大限に使う点も見事だった。何より、大雨の日に劇中にも大雨の場面があること、そしてそこで本当の水が使われることの皮肉極まりなしというようなところも、この劇団にいかにも似合うといえる。演劇の楽しさを露出する犬と串は佐藤佐吉演劇祭2014+「ゴールデンフォックス賞」を受賞した二つの団体の一つであり、これからも注目すべき劇団である。

 犬と串と対照的に同会場の大道具、音響機械、照明を使わずにすみ、それで評判を受けたのは日本のラジオの公演『ツヤマジケン』だった。演劇祭のパンフレットでは「津山三十人殺し」という戦前の殺人事件をモチーフにした作品として紹介されるが、実際は現代のサスペンス小説の舞台化としての雰囲気が強い。緊張感を一瞬も緩まずに展開する物語は、このジャンルの愛好者の期待に充分応えるであろう。劇場の大道具を使わなかった代わりに、強い個性を持つ俳優たちの演技と緊張感に溢れたストーリーを見せ所にした。

 ワワフラミンゴの『映画』は二つの作品からなり、それらを通底するのは不思議で、新鮮な感じのユーモアである。王子小劇場が管理している王子スタジオ1で上演され、現代的でお洒落な雰囲気で印象に残る。

 pit北∕区域で行われたNICE STALKERの舞台『女子と算数』は、機械式計算機の発明を廻る物語と、現代を生きる二人の男女の恋愛物語を、気の利いたユーモアで平行的に展開させる作品だった。算数が赤い糸のようにこの二つの物語を結びつけるが、何よりもその陽気な笑いの要素が特徴的だった。

 次にPit北∕区域を使ったのは、宗教劇団ピャー!!の公演『夏といえば!に捧げる演劇儀式~愛と絶望の夢幻煉獄』だった。宗教劇団ピャー!!は音量の面でも、激しくてむごいヴィジュアルの面でも、いい意味で限度を知らない劇団だ。ショッキングな場面が相次ぐ中、そのカオスの向こうには何か救いがあるかどうか、微妙ではあるが、過剰で衝撃的な演技でしか表現できないことがあるのは確かで、この団体はその辺りのことを徹底的に試みることができる数少ない劇団なのではないかと思う。

 桃尻犬の公演『愛ヲ避ケル』は、愛のあるセックスで感染する病が流行っている世界を描き、そこに住んでいる人たちの間の関係に注目を当てる物語だった。ダイナミックで、思いがけない展開が最後まで続き、観劇体験として面白かった。この作品に見える桃尻犬の特徴を掴もうとすると、まとまった形に落ち着いた終わり方、つまり少しでも正常(正気と読む)を匂わせる結末だと満足できない、というような非常識をとにかく守り抜く作風であろう。非常識というより「異常識」という言葉の方がより相応しいかもしれない。社会のことや人間のことを別の観点から見つめてみないか、という挑戦を投げられたような感覚だった。その挑戦を観客に押し付けるには努力(そして舞台をべたべたにする小道具)を惜しまない桃尻犬は、とにかく変わった存在感を放つ団体で、面白いことに挑戦してみたいと思う観客に特におすすめだ。

 なかないで、毒きのこちゃんの『こんにちわ、さようなら、またあしたけいこちゃん』は、犬と串と並んで、今回の佐藤佐吉演劇祭「ゴールデンフォックス賞」を受賞した。上演時間は3時間40分に及び、一つの舞台の成立過程を見せる作品で、劇中劇のような構成だった。ある演目の稽古場の様子をはじめ、通し稽古、それからダメだしの場面と、休憩を挟んで、もう一度の通し稽古でその舞台を完成に近い形で観客に見せる。それにしても、演劇作品の成立過程を見せるだけではなく、演劇をきっかけとする感動の発生もどうやって起こるのか、観客に肌で体験させる。演出家の指示によって、役者の感情の表現が変わる。そして観客がその過程を目撃させられる。知らないうちに、観客である自分も演出家の指示に従ってしまいそうな状態になる。もっと深い感情を見せるべきだと言われる女優と同様、観客もその感動的な場面に引っ張られ、共感し、つい泣いてしまいそうになる。観劇中の観客の感情は、もう自分のものではないと思えてくる。目の前にある舞台の上で展開している物語にどの程度に夢中になってもいいか、またはそれに対してどのように距離を保てるか、というようなことを考えさせる作品だった。メタ演劇の実験として面白かったし、演劇に関する考察を促す点もこの舞台の長所だった。

 ガレキの太鼓『妹の歌』は口語演劇の現在を代表する作品として佐藤佐吉演劇祭2014+に参戦した。子どもの目で見られた大人たちの、昔思い描いていた将来の自分と本当の今の自分を向き合わせる瞬間の困った立場を描く作品で、現代を生きる大人の心理を繊細に捉える。20代後半を過ぎた観客は鏡の中で自分を見るような感覚を免れないかもしれない。空想的な世界とも、抽象的な要素とも無縁なこの舞台は、今年度の佐藤佐吉祭の風景の中で意外な新鮮味を与えた作品だった。

 サムゴーギャットモンテイプの公演『CQ、CQ、』はいくつかの物語をパッチワークのように結び合い、現代と未来、この世界と異界、地球と宇宙、人の内面世界と人間関係を前提とする外の世界を結びつける野心の高い作品だった。人間とはどうしようもない生き物だということを描くこの物語群の魅力は、その単純さにあるかもしれない。演技の面では、限られた空間を上手に使いこなし、物語がいかにも広い空間の中で展開しているような錯覚を生じさせるのは見事だった。

 以上は12組の劇団が佐藤佐吉祭で発表した舞台の特徴をまとめてみた。作品それぞれの趣向が違い、この中でどのような観客でもお好みの演劇を、少なくとも一つか二つは見つけられそうだ。この意味では佐藤佐吉演劇祭によって観客の目の前で広げられた演劇風景は、東京の小劇場演劇の現在を反映しているといえる。

 しかし、今年の佐藤佐吉祭が観客のために用意したものは演劇にとどまらなかった。演劇祭のパンフレットで王子小劇場の職員に紹介された街のみどころを満喫するのが、この演劇祭りのもう一つの楽しみ方になった。昼の公演の観劇が終わってから、残りの午後の時間を使って北とぴあの展望台に登ったり、稲荷神社までお参りに行ったり、目当ての料理屋さんを探しに街を歩いたりする観客に見えてきたのは、王子という街自体だった。筆者もパンフレットに載せてあったおすすめに添って王子廻りをしながら、この街には潜在的なエネルギーのようなものがあり、人が集まる場所、「盛り場」になりえる要素を持つ街だという感じがした。演劇祭はその潜在的なものを起動できるきっかけとして大きな役割が果せるのではないかと思えてきた。

 街のみどころをアピールすること以外、今年の演劇祭において観劇体験をさらに豊かにする様々な企画があった。特設ブログに各団体の稽古場レポートや他の情報などを載せることがその一つだった。それから特に地方(静岡、岡山、広島)から来た観客に人気の「王子で一日で5本観劇ツアー企画」や、「ひみつきち」という、観客と主宰者または出演者との交流を可能にする場所が施設された。このような企画は、演劇と街を結びつける試みとして、この演劇祭の最大の魅力だったのではないかと思う。演劇の向こうにはやはり街があり、人がいるという確信が得られる。当たり前のようなことだが、普段は多分あまり意識されていないことだ。このような確信を与えてくれた佐藤佐吉演劇祭のこれからの方向を見ておきたいと思う。

ラモーナ ツァラヌ


【筆者プロフィール】
ラモーナ・ツァラヌ(Ramona Taranu)
 1985年生まれ。ルーマニア出身。早稲田大学文学学術院に所属。世阿弥能楽論の研究を中心に、総合的に舞台芸術の研究に取り組む。劇評連載「青い目で観る日本伝統芸能」と日本の演劇を英語で紹介するブログ「鏡は語る」を執筆中。
 

スカラシップ2014上半期レポート 臼杵遥志

参加を促す責任
臼杵遥志

先日開催された佐藤佐吉演劇祭2014+の在り様について「観客の参加」を軸に考察し、まとめようと思う。

◇複数会場での開催

二週目からの参戦だったので王子小劇場、王子スタジオ、pit北/区域の三会場での観劇ではあったが、この試みは功を奏していたように思われる。

複数の劇団がそれぞれの作品(=ソフト)を実演する場(=ハード)が複数あるということは、今回のような多様性に軸を置くタイプの演劇祭にはうってつけだったのではないだろうか。実際、王子スタジオのガラス張りの開放的な雰囲気や、pitの倉庫を思わせる閉鎖的な空間が作品を構成する要素として大いに働いている作品も見受けられた。(ex.ワワフラミンゴ「映画」、NICE STALKER「女子と算数」)

また、複数会場によるメリットは作品だけに留まらず王子という町にももたらされた。それぞれの会場で少しずつ開演時間をずらし、日に複数の観劇をするいわゆる“ハシゴ”を可能にしたことによって観客が王子に滞在する時間、王子の街を歩く機会を創出することに成功した。結果、町の賑わいや周辺店舗の売り上げにも寄与したものと思われる。私自身、これまで王子小劇場で観劇することはあっても王子で食事や買い物をする機会はほとんどなかった。それが今回は作品と作品の間、会場までの時間を王子の町で過ごす機会が多く生まれた。


◇演劇“祭”であること

「劇場のセレクション団体による連続上演」というのがこれまでの佐吉祭のスタンスだそうだ。期間は約二か月から二か月半。参加したのは8~10団体。一方、今回は期間が約一か月、参加したのは12団体。運営の負担は後者の方が遥かに大きいことは素人目にも明らかである。しかし後者の方が演劇祭自体の密度・熱量、平たく言えば「祭りっぽさ」が高いのも事実だろう。私は過去の佐吉祭を見ていない、つまり前者の実態を知らないことを前提とした上ではあるが、後者のお祭り感を分析しようと思う。

一番の違いは観客の参加度合ではないだろうか。前者の場合、観客は演劇祭だからといって特別何かいつもと違うことはそれほどないだろう。いつものように気になる公演を選び、予約をし、観に行く。後者の場合、まずハシゴという選択肢が通常よりも選び易い位置に用意されていて、演劇祭パンフレットを片手に王子の町を歩いたり、演劇祭期間だけの休憩スペース「ひみつきち」に行ったりする。そこには様々な非日常が存在していて、それによって観客も「祭りに参加している感」を感じることが出来る。Vineによる応援メッセージや劇場周辺の店舗との連携など、より多くの人を巻き込む仕掛けも祭りの盛り上がりを演出していた。インターネットや地デジのような「双方向の作用」を作品の外側で上手く活用した点で従来の佐吉祭と違ったのではないだろうか。


◇スポンサー賞

佐吉祭の各賞は王子小劇場の年間賞である佐藤佐吉賞との差別化のためかどちらかといえば緩い、お祭りのような楽しげな賞レースとして位置づけられているのかもしれない。最優秀作品賞・最優秀俳優賞といった文言は使わずゴールデンフォックス・衝撃俳優賞とすることで確かに表面上はラフにはなるがそれ以上に曖昧な評価基準や、観客による投票だけで演劇祭の実質上のトップを決めることに対する抵抗が大きくなってしまう。観客賞が存在すること自体には賛成だが、その在り様は本当にそれでいいのだろうか。私は何も演劇祭の賞にシビアさを求めることの是非を説きたいのではない。先にも述べた通り、今回の佐吉祭は観客の参加度合が高かっただけに各賞の設置・授与が「内輪」に見えてしまうことの問題を提議したい。

「照明」や「特殊技術」といった作品要素の部分的評価や「おもてなし」や「クーポン」といった制作的な評価には作品同士を比較し、評価する意義が認められるが、「アルコール」や「シャンデリア」など特定の作品に形式上賞を与えるために無理くり作ったような賞を与え、最終的に12団体全てを同列に並べるくらいなら最初から「参加賞」とでもした方がよっぽどフェアで誰しもが納得のいく賞の設置・授与である。
また評価基準・審査過程も曖昧で不透明である。その作品のどこをどう評価して、他の作品よりどう優れていたのかを非公開にするならするではっきりとそのスタンスを提示してほしいし、順位がついているのなら知りたくなるのが観客の本音だ。

何度も繰り返すが私はお祭りに水を差したいわけではない。しかし、上記のような賞は参加団体のモチベーションにも観客の熱狂にも繋がるとは到底思えず、主催者や協賛者の自己満足のようにしか思えないのだ。お祭りゆえのラフさやユーモアは大歓迎だがそれが内輪での盛り上がりになってしまっては意味がない。先に述べた通り今回の佐吉祭は観客の参加度合が高いものだっただけにその総括的な評価、着地点である各賞には最低限の公平さ・透明度が求められていた。それを訳の分からない賞、中途半端な評価基準と透明度で終わりにされたのでは裏切られた気分にさえなってしまう。

このスポンサー賞の項に関しては主観・私見に依る部分が大いにあるが、逆に言えば一観客として概ね楽しめた演劇祭の中でこの部分だけが納得のいかない浮いた部分であったことだけは記しておきたい。

◇総括

今回の佐吉祭は「観客の参加」を利用し、時間とお金が許せば「他の作品も見たい!」と観客に思わせる仕掛けに富んでいた。これまで獲得しえなかった層の視線を得ることができたのではないだろうか。またこれが公共劇場ではなく民間の劇場、民間の企業が主体となっていることも大きなポイントだろう。アウトリーチや公益性よりも演劇作品の実演が真ん中にあってぶれない、劇場も観客もまずは良質な作品を求めるという姿勢によって成り立っているところに佐藤佐吉演劇祭の小劇場界におけるアイデンティティとオフシーンの旗手である王子小劇場の担う役割がある。それだけに、唯一無二のスタンスを貫いてほしかったという思いが残るのも事実だ。結論、王子小劇場は高いエンタメ性と芸術性を両立させる「戦う劇場」で、佐藤佐吉演劇祭はその活動のひとつの答えなのだろう。

スカラシップ2014上半期レポート 藏下右京

王子における演劇祭の役割
藏下右京

今回の「佐藤佐吉演劇祭2014+」は、「短期間、複数会場」での開催であった。これは佐藤佐吉演劇祭において初の試みであった。
 実際には参加していないため、表層部分だけを見て言及することになってしまうが、HPや各種資料を見ると、過去の5度の佐藤佐吉演劇祭は、祭りとは名ばかりの印象を受ける。「演劇祭」と銘打ち、約2~3ヶ月という長期間に渡ってはいるのだが、5度とも王子小劇場による単独開催であった。また、参加劇団のラインナップを見ると、現在の小劇場で活躍している劇団が数多く名を連ねており、王子小劇場の感性の鋭さと演劇祭に対する熱意は伝わってくるのだが、世間一般の客からしてみれば普段の王子小劇場での公演との差異が感じられず、小劇場界の中だけで盛り上がっているような印象を持たざるを得なかったのではないだろうか。
 しかし、今回の演劇祭はこれまでと異なり、「祭」という空間の形成が意識されているように思われた。5会場すべてが「北区王子」、それも王子小劇場を中心として半径150mに集結しているため、観客は気軽に会場を移動することができ、体力さえ許せば1日2、3本の観劇が容易にできるようになっており、実際に私も1日3本観劇したが、劇場間を移動するのが意外と楽しく、ロックフェスティバルに来ているような感覚を味わえた。また王子小劇場の裏手には、小さな空間ではあるが、演劇祭に来場した人々がくつろぎ、交流することができる「ひみつきち」が作られていた。演劇という芸術を通じて人と人が繋がる空間として、演劇祭が少なからず機能していた。
 また、これまでの演劇祭に比べ宣伝が大々的に行われていた。SNSの継続的な活用はもちろん、HP、チラシやパンフレットにも相当な手間がかけられていたし、vineを使った動画企画という実験的な宣伝方法も模索されていた。「プログラム編成は維持しつつも外部に対して開いていきたい」という、劇場側の意思を感じた。
そして、今回の演劇祭が「王子」の街並み、あるいは「東京都北区」を強く意識していたことを忘れてはならない。
 ここで唐突だが、北区の人口動静について少し説明したい。北区は65歳以上の老年人口比率は24.6%と23区中で最も高い。さらに図1の人口ピラミッドを見てもらえるとわかるように、50~64歳の男女も相当多い一方で、働き盛りの35~49歳の男女は少なく、こちらは23区中で最下位である。このように北区は少子高齢化が顕著で、人口も1965年から2010年にかけて12万人も減少している。今後はますますその傾向が強くなり、活気を失っていくであろうことは想像に難くない。王子も例外ではなく、実際、王子という地域を見まわしてみても、人口(特に若者)を惹きつけるような商業・娯楽施設は少なく感じられる。
 それについては劇場側も自覚的なようで、この演劇祭を通じて王子という街全体を盛り上げていこうと、様々な工夫を凝らしていた。上演会場として「北とぴあ」という北区の公共施設、トークラウンジの開催場所として「王子一丁目町会会館」を使用したのはさることながら、王子銀座商店街の協賛も得ている。また、演劇祭のパンフレットでは王子の街について特集が組まれており、出演俳優が劇場周辺の神社や飲食店を訪れ、撮影を行っている。
そういった劇場側の様々な試みによって王子は普段より賑わいでいたようで、参加団体の役者やスタッフだけでなく、合計で約6000人の観客が王子を出入りした。後夜祭において佐藤電機株式会社の佐藤行雄代表取締役が「地味な街だが、演劇祭のおかげで若者が来てくれて嬉しい」という趣旨のことを発言しておられたように、一時的ではあるが王子に活況をもたらしたという点で、今回の演劇祭は一定の役割を果たしたといって良いだろう。
 一方で、今後における課題もいくつか見られた。複数会場の同時運営にあたり、劇場側は少々バタバタしていたように見えた。単純に、即座に動ける人員が不足したのではないだろうか。今後もこの規模を維持、あるいは拡大するとなると、運営側の人員を増やすことは必要不可欠であろう。また、雰囲気づくりへの熱意や努力はひしひしと伝わってきたのだが、まだ「祭り」と呼ぶには不十分であると感じた。クセのある劇団が多く個人的にはとても楽しめたのだが、一方で普段演劇を観ない人からすれば、依然として立ち寄りがたい雰囲気を醸し出していたのも事実である。客層の拡大や王子全体の活性化を視野に入れるのであれば、王子小劇場の特色を打ち出す一方で、「創客」という観点から考えて多少なりとも世間の趣向に合わせた上演プログラムの導入が必要になってくるだろう。一般層を意識することで、王子小劇場の立ち位置もより明確になってくると思われる。毎年演劇祭を行っている「北とぴあ」との本格的な共催も面白いのではないだろうか。
王子に関するこんな言い伝えがある。かつて歌舞伎役者の市川團十郎が「暫」という芝居を上演するので、市川家が信仰している成田山へ成功祈願をすると、「それは王子稲荷にまかせたのでそれに願え」といったと言い、それがきっかけとなって王子は一時参詣人で賑わったそうだ。そんな風に現代においても、たくさんの劇場がある王子が、演劇を媒体として数多くの人々で賑わえば嬉しいなと思う。佐藤佐吉演劇祭が、東京の小劇場界に対してのエポックメイキングな存在でありつつ、王子にたくさんの人々を惹きつける一大イベントになることを願ってやまない。

  図1
  図2
  図3


スカラシップ2014上半期レポート 山田カイル

捏造される周縁性
山田カイル

 佐藤佐吉演劇祭の参加作品を観るために、王子と青梅線沿線の我が家を行き来しながら、私はほとんど、日本の演劇の中心、という事について思いを巡らせていた。
 芝居の勉強をするために大学に入った年、最初のセメスター、主任教授に「日本の演劇はほとんど世代論だから、そう覚悟しなさい」というような事を言われた。日本の演劇界には更新されるべき中心がないから、ほとんど世代性の議論でしか演劇史を語る事ができない。これは、日本という国で演劇をやるうえで、そして観るうえで、ひとまず前提として差し支えないと思う。
王子小劇場が “Oji Fringe Theatre”である事を思えば、佐藤佐吉演劇祭は、日本の小劇場を巡る中心と周縁の現状を見事にレイアウトしたフェスティバルであると言えるだろう。それは、中心の不在を受け入れる事で初めて成し遂げられる周縁性、と言い換える事ができる。

 私が観劇したのは主にフェスティバル前半の作品(犬と串、ワワフラミンゴ、NICE STALKER, 柿食う客、日本のラジオ)であった。その事自体の是非を論じるつもりではない事を事前に断ったうえで述べるならば、これらの作品を観て、私は一切、これらの作品を「新しい」と思わなかった。
 犬と串の『エロビアンナイト』のナンセンス、柿食う客の『へんてこレストラン』のリズム感覚、日本のラジオ『ツヤマジケン』のウェルメイドな構成、どれも新しくない。ただ、どれも磨きあげられている。
 (再び新しさの是非に関する議論でない事を断ったうえで)中でも新しく無さが際立っていたのは、NICE STALKERだろうか。ほとんど交錯するでもなく並行して提示される複数の筋、眼鏡の女性に対するあからさまなフェチズム、物語には何の関係もなく舞台上に居続ける熊の着ぐるみ(実は中身はヒロインだった、というギャグでロジックを与えられなくても、あの熊はきっと舞台上に存在し続ける事ができた)ひとしきり人物が登場した後、全体の人間関係をアップビートな音楽に乗せたオープニングダンス(?)によって提示するやり方など、言ってしまえば、全て見た事があり、新しくない。
 けれど私たちは、いつから、物語の筋に何の関係もない熊の着ぐるみが舞台上に居ても、違和感を訴えなくなったのだろう?私たちはいつから、オープニングダンス(?)が作中の人間関係の縮図だと理解できるようになったのだろう。
 そういった問いに対して「第三舞台とか、あそこら辺じゃないかな?」みたいな事は、簡単に言えてしまう。しかし反対に言えばそれ以上の事を言うのは、非常に困難なのではないか。
今我々が観ている日本の演劇に関して、ある手法のルーツを遡る事は、さほど難しくないだろう。日本の演劇の「手法の家系図」を仮定したときに、おそらく、日本の演劇界という大家族は、少数の点に向かって系譜が収斂していくような図を描かない。時代を遡るごとに点が消失と誕生を繰り返し、大量の平行線を描き、いきなり60年代で3つか4つの点にぶん、と収束するのではないか。これは「演劇に中心のない国」に特有の現象なのではないかと思うし、私の主たる関心はこの感覚にある。家系図を描く事は、この先の家族計画を考えるうえで、不可欠な事であるからだ。
 そのうえで、これから日本の演劇界に中心が生まれる事は、おそらくない。中心と周縁の描く遠心力で演劇というメディアを動かすことのできない環境で、演劇はどのように更新されていくべきなのか。私がしつこく「中心」という語を繰り返すのは、この問いに答える義務感のようなものを感じているからだ。
 佐藤佐吉演劇祭という観劇体験を経て「もはや何が新しくないかを確認する」という事は有効な手段であると、私は感じた。私たちは、何を受け入れる事ができるのか。物語と関係のない着ぐるみは受け入れる事ができる。人の出入りで演劇性が維持されるのに、人の出入りに理由が無いことも、受け入れる事ができる。そして、さらに、それが手法的にブラッシュアップされ得る事を確認する。そうして一つずつ、観劇体験として「これだけ上手にできる人たちが居るのだから、これはもう新しくない」という確認作業をすることで、次に何をすべきかの手がかりとなり得る。周縁を捏造する事で、仮の中心を想定する。そしてまた、新たな周縁性を確保する。そういう試みとして佐藤佐吉演劇祭を観ることで、小劇場の現在を定義する事ができるかもしれない。
 無論、これは「中心と周縁」という二項対立の中に一つの演劇祭を当てはめるという、強引な視点をよしとしてこそ言える事である。けれど、これだけ多種多様な作品が強引に一つのフェスティバルにまとめ上げられたのであるから、これくらいの事は言って良いだろうと思っている。

スカラシップ2014上半期レポート 野口彩

佐藤佐吉演劇祭2014⁺と王子の街
野口彩

2年に1度開催されている「佐藤佐吉演劇祭」は今年2014年で6回目を迎えた。これまで王子小劇場を会場としていたが、今回は北区の5会場を使用し、スケールを拡大しての開催となった。私は今回初めて演劇祭に足を運んだのだが、全12演目を観劇させていただき、演劇の面白さだけでなく、劇場と地域の関わりや劇場の在り方というものを考える貴重な機会となった。
 今回の演劇祭の最大の特徴は、やはり複数会場での上演と言えるだろう。そして、全会場が徒歩圏内である点が大きな魅力であり、王子の街と演劇祭を繫げた要ではないかと考える。今まで、王子=王子小劇場というイメージが強かった為、王子に複数の劇場がある事は新たな発見であった。(演劇の街と言うと下北沢を思い浮かべる人が多いと思うが、王子の街にも演劇環境は整っていると言えるのかもしれない。)1日で複数公演を観劇する際、空いている時間はおのずと王子で過ごす事になるだろう。複数会場の存在は、来場者の流れを駅から劇場の一線だけではなく、様々な行動へと導くきっかけになったと思う。王子小劇場が製作した公式パンフレットの周辺マップやクーポンも同様だ。このように、劇場外にも視野を向け、来場者が観劇プラスαの時間を過ごせるような仕掛けを実行する事は、王子の街にとってもプラスになり、街と劇場のwinwinの関係に繋がっていくと考える。
また、演劇祭のタイムテーブルを見て観劇の計画を立てる事や、歩いて会場を移動する事は、音楽のフェスに似た感覚であった。劇場裏に設置されていた秘密基地も、お祭り感を感じさせる大きな役割を担っていたと思う。真っ白な壁が日に日に様々なメッセージで埋まっていく様子は、この演劇祭が多くの人に支えられている事を実感させるものであった。演劇祭という期間を設け参加作品をただ上演する形式とは異なり、今回の演劇祭は、観客が身を持って演劇祭というお祭りを体感できたように感じる。
劇場と地域の関わりの一つとして、子どもと演劇についても関心を持つようになった。参加団体の一つである柿食う客は、『へんてこレストラン』というこどもと観る演劇プロジェクトの作品を上演した。このプロジェクトは、幅広い世代に愛される舞台制作を目指すものだ。こどもと大人が同じ空間で演劇を観る体験を共有し、コミュニケーション能力の育成と相互理解を深める事を目的としている。恥ずかしながら、私は演劇祭をきっかけにこのプロジェクトの存在を知った。偏見かもしれないが、小劇場の劇団はほとんどの作品が大人に向けたものだと感じている。子ども向けの作品は、児童演劇に特化した劇団が上演していると思っていた為、普段小劇場で活躍している劇団がこのような作品創りに取り組んでいる事が意外だった。テンポよく短い時間にギュッと凝縮されたこの作品は、子どもだけでなく大人も楽しめるもので、シンプルなセットが演出をより際立たせていると私は感じた。面白さだけでなく、原作『注文の多い料理店』を久しぶりに読み返したくなる懐かしい気持ちにさせてくれた。
昼公演を観に劇場へ足を運んだ際、会場である北とぴあに向かう小さな子ども連れの親子の多さに驚いた。後で調べたところ、北区の複合文化施設である北とぴあは、北区の子育て支援のセミナーやイベントを行っているようだ。今まで夜公演を観に王子に立ち寄る事が殆どであった為、昼間の親子連れの存在は意外だった。そして、『へんてこレストラン』のポスターを見た親子が興味を示している場面と何組も遭遇し、親子観劇は私が思っている以上に需要があるのではないかと感じた。
現在、北とぴあでは既に子ども向けの演劇は数多く上演されている。また、王子小劇場の中心にある若手劇団の公演という軸はこの先も大切にするべきだと思う。しかし、前述した地域と劇場の関わりを考える中で、生活に密接なものの一つである子育てにも焦点を当てる機会を作ってみてはどうだろうか。演劇祭で子どもの枠を作る事、不定期で親子鑑賞ができる作品を上演する事、現在行っている学生向けワークショップの子どもクラスを設ける事等様々なアプローチの仕方が考えられる。演劇の教育と言う側面は公共劇場が担う事が多いが、民間劇場ならではの柔軟さを活かせるように思う。
以上のように、地域と劇場の関わりを考えた根底にあるものは、昨年のレポートでも記述した私が小劇場に対し抱いている閉鎖的社会という印象だ。演劇を社会に広める為の取り組みが演劇界には必要だと現在も考えている。今回の演劇祭は、王子の街にも目を向け、秘密基地やトークラウンジ等の観劇プラスαも企画するといった視野の広さを感じさせるものであった。複数会場での開催も今後是非続けて欲しい取り組みだ。
私は、数多くの劇場の中で、王子小劇場は若手劇団だけでなく演劇ファンへも門戸を広く開けてくれていると感じている。このスカラシップ制度や今回の演劇祭でのボランティアスタッフがその一例だ。演劇経験の無い者にとって、何かしらの形で劇場に携われる機会をいただけることはとても貴重なものだ。将来どのように演劇に関わろうかと考えている中で、職員の方とお話しできる時間は色々なヒントを与えてくれる。また、ボランティアスタッフで知り合った演劇ファンとの出会いも演劇祭に携わって良かったと思う大きなものだ。普段一人で観劇する機会が多いため、人と作品の感想を話す時間がとても楽しかった。演劇祭を通し出会う事が出来た方々、そして作品達に心から感謝したい。
最後に、新体制になった王子小劇場の持つ柔軟さが今後どのような企画に活きるのかとても楽しみだ。今回の演劇祭を思い返す中で、私は王子小劇場のファンになった事を実感している。王子の街の人々が、地元には王子小劇場があると胸を張って言えるような、そんな劇場になって欲しい。

2014年10月6日

(石榴の花が咲いてる。)「距離感を見誤る’14」

(石榴の花が咲いてる。) http://zaccuro.blog.fc2.com/

「距離感を見誤る’14」

2014/10/6(月)〜7(火) @王子小劇場 5st

【脚本・演出】安田智

【出演】
逸原まりあ((石榴の花が咲いてる。))
太田ナツキ(パントマイム舞☆夢☆踏)
岡部瑶子(劇団くるめるシアター)
金子美咲(劇団くるめるシアター)
小林唯(劇団ミックスドッグス)
斉藤穂
崎濱恵梨(劇団しどろもどろ劇団テアトルジュンヌ)
津田颯哉(実験劇場)
土井今日子(劇団くるめるシアター
富田喜助(第27班)
中野雄斗((石榴の花が咲いてる。))
美並唯((石榴の花が咲いてる。))
梁稀純(どろんこのキキ)
渡邉煌次朗

【日時】
10/6(月) 16:00(公開ゲネプロ)/19:30
10/7(火) 11:30/16:00/19:30

【チケット】
社会人:1,000円
大学(院)生/専門学校生:900円
高校生:800円
中学生:700円
小学生/60歳以上:600円
(予約 それぞれ上記より-100 円)

①ビギナー割((石榴の花が咲いてる。)初見の方)
 →-100 円
②一見さんおこと割((石榴の花が咲いてる。)過去公演のフライヤー、パンフレット、チケット半券を持参)
 →上記より-200 円
③かくさん割(Twitter「(石榴の花が咲いてる。)」アカウントのツイートをリツイート)
 →リツイート数×100 円引き(各回1名、抽選)
④いいね割(Facebook/mixi「(石榴の花が咲いてる。)」
 →言い値の額でご覧いただけます(ただし1円以上でお願いいたします……各回1名、抽選)
⑤SNS 割(今公演へのコメントを SNS・こりっちの本公演ページ「観たい!」に記入
 →1文字あたり1円引き(各回1名、抽選)
⑥リピーター(今公演のチケット半券を持参)
→無料

【こりっち】
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=55332
【感想などまとめ】
http://togetter.com/li/729119

【スタッフ】
鳩:白鳥渚(1/10世紀)
照明:寿里(白昼夢)  
音響:河相朱音(ケベック)  
音響操作:島田虱
衣装・メイク:芹沢加奈、相澤智恵(中大二劇)
制作:上月理恵子
制作協力:ジュン・チャン
キービジュアル:崎濱恵梨
フライヤー:立川周((石榴の花が咲いてる。))
撮影:映像集団Trinity
舞台監督:齋藤友菜
製作協力:逸原まりあ、美並唯((石榴の花が咲いてる。))

2014年10月3日

劇団fffff「ひともどきシュレッダー」

劇団fffff http://gekidanfffff.web.fc2.com/


「ひともどきシュレッダー」

2014/10/3(金)〜5(日) @王子小劇場 5st

【脚本・演出】安田智

【出演】
稲垣晋太郎
尉林暉
大竹加耶子(水槽ラドン)
小倉修也
笠浦静花(やみ・あがりシアター)
島田洋樹
高田彩香
都倉宏一郎(劇団fffff)

【日時】
10/3(金) 19:00
10/4(土) 14:00/19:00
10/5(日) 13:00/17:30

【チケット】
一般:前売 1500円 当日 1800円
学生:前売 1000円 当日 1300円
高校生以下:前売・当日 1000円

【こりっち】
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=45194
【感想などまとめ】
http://togetter.com/li/728211


【スタッフ】

舞台監督:坂西俊太
舞台美術:遠藤周
舞台:中西亮介/伏見幹史
照明:徳田昴星/井口真帆/遠藤智江/金津純子
音響:高橋広明/内田茉里/岡みのり/長田あゆみ
映像:近藤多聞/越久裕也
衣装:大久保翔太
宣伝美術:高木咲乃/千代田修平/中間友美
制作:吉田櫻子/佐藤りさ子/西山美穂
小道具:大村優介
WEB:橋本剛志
広報:千代田修平/吉田櫻子
演出助手:都倉宏一郎